アロマティック
 そのあとが長かった。時間は過ぎていくのに、となりの席は空いたまま。
 戻ってくるの遅くない? となりの席がぽっかりと空いていると気になるもので、みのりは永遠のことを次第に心配しはじめた。
 時計を確かめて、またしばらくすると時計を見る。さっき確認したときから5分は経っていた。ということは、最初に席を外してから5分以上は戻っていないことになる。
 いくらなんでも時間かかりすぎじゃない? 女じゃないんだからトイレに長居はしないでしょ? もう戻ってきてもおかしくないはず。
 トイレが混んでる? もしかして具合悪い?
 ちょうど会話が止んだところを見計らって、みのりは切り出した。

「ねえ、あの人、大丈夫?」

「あの人?」

 ソプラノボイスの、可愛らしい顔をした天音が聞き返す。

「ほら、さっきトイレに行ったまま帰ってこない……」

 みのりはお手洗いのほうを指さす。

「ああ、永遠?」

「時間、けっこう経ってるけど、戻ってないみたい」

「永遠ね」

 天音がふっと視線を落として重いため息をつく。少し長めの前髪が瞳を隠した。

「彼、最近ちょっとバタバタしてたんですよ……」
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