アロマティック
 だからって、そんな魅力に負けてたまるものか。
 男なんてろくな生き物じゃないんだから。
 芸能界なんて見た目勝負でしょ? わたしは見た目に騙されない。

 みのりはこれ以上話しかけられるのを嫌がるように、頬づえをついて永遠の視線を遮断した。違うことに意識を向けて気をまぎらわせようと、テーブルの反対側に座る幼馴染みを見る。
 理花は淡い照明の元でも分かるくらい、逆上せたように頬を火照らせこの状況を楽しんでいるようだ。みのりは彼女たちの話しの内容に、耳を傾けた。
 ドラマや出演番組に関する質問をして「Earth」のメンバーから返ってくる言葉に、目を輝かせて喜んでいる。ときには感想も求められているようだ。
 理花にとっては夢のような時間でも、この場にいられる特別感も、高揚感も感じられないみのりが感じていることといったら疎外感くらいだった。
 ついていけない会話に加わることにも興味はなく、早くときが過ぎるのを待った。

「トイレ」

 となりに座っていた永遠が立ち上がり、お手洗いに消える。
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