アロマティック
 凌との接触を避けるために、マイクロバスで待つという選択肢もあったにはあった。

 しかし、今回は。
 このドラマのために、アロマアドバイザーとして俺に携わってきたのだから、撮影のときは極力現場に立ち合うとみのりがいったのだった。


 1時間前。ふたりきりのロケバスにて―――。

「いいのか? お前がずっと避けてきた凌の近くにいるってことなるんだぞ」

「分かってる。でも、この仕事をやると決めた以上は後悔がないように、最後まで妥協しないでやりきりたいの」

 そういったみのりの瞳には、ほんの僅かな迷いも見つからなかった。
 仕事に私情を挟まず真剣に関わろうとするその姿が、永遠はまるで、自分のことのように誇らしかった。

「永遠くんと話して思ったの」

 凌が現れ、元カレとの再会にみのりが衝撃を受け、永遠の元を去ろうとした日。

「凌と顔を合わせたことで、いつか会うかもしれないっていう不安から解消されたこと。もう、びくびくして過ごすこともなくなったんだって。今後のことを考えても、この問題から逃げちゃいないって」

「……みのり」

「怖い気持ちも、正直、あるけど……前に進みたい」

 揺らぐことのない瞳に、愛しさが込み上げてきた永遠はみのりを抱き締めたくなった。
 スタッフがたくさんいるロケ現場の近く、どこで誰が見ているかわからないから、我慢したけど。
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