アロマティック
「お願い」

「……わかった」

 永遠がドアから手を離し、向き合うと、みのりは永遠の胸に飛び込んだ。たちまち永遠の香りに包まれ、望んでいた場所に収まる喜びに体が震える。立ったまま抱き合う。
 みのりがキスを望み、永遠は望まれるままにキスを与える。
 額に、頬に、鼻の頭に、次々と降ってくるキスに身を任せる。軽いキスは唇にも降ってくるが、それでは物足りなかった。
 もっと。もっと、キスして――。
 永遠のキスを受け入れやすいよう、精一杯顔をあげる。みのりが痛い思いをしないよう、永遠はうなじに手をあてて支えた。
 幸せに満たされた体がもっと、もっとと、永遠を求めて熱くなっていく。

 これ以上すると止まらなくなる。永遠は自制が利かなくなると直感して、みのりの唇から離れた。頬を赤く染め、うっとりした顔で見上げるみのりは美味しそうだった。
 だめだ。完全にノックアウトだ。
 先に進みたい気持ちを抑えるため、キスを諦めた永遠は、みのりの背中に腕を回して抱き締めた。みのりも永遠の背中に回した腕に、力を入れ、強く抱きしめ返した。
 彼の引き締まった体に頬をぴったりとくっつけると、全力疾走したあとのように、心臓がものすごい早さで打っているのが伝わってくる。
 やがてみのりは気づく。
 お腹に当たるものの存在に。硬くなった永遠の……。

「あの……」

「気にするな。俺も気にしないから」
< 272 / 318 >

この作品をシェア

pagetop