アロマティック
「永遠くんは仕事のパートナーであって、そんな風に考えたこと、一度もない」

 1度だけ、キスはしてる。
 してるけど、あれは事故みたいなものだ。
 実際、キスしたことを忘れてるのか、あれ以来お互い話題にものぼらない。意識して気まずくなることもなく、お互い普通に話してる。

「ぼくが相手だと、役不足かな?」

 天音は自信ありげに、口の端をあげて笑う。相手を落とす、とっておきの極上の笑み。

「役不足? 仕事相手としてってこと?」

 家に誘われ、髪の香りの話し、そして話題は永遠へ。密着したまま目まぐるしく代わる話題に、なんの話しをしているのか、みのりはわからなくなった。

「わざとごまかしてるの?」

「……は?」

「満足させてあげられると思うけど?」

「……でも、本当は興味ないんでしょ?」

「興味?」

 天音はわざと間をあけることによって、次の言葉に大きな意味をもたせる。

「大ありだよ」

 本当に天音は、アロマに興味あるの?

「どんなところに?」

「……小さいところとか、かわいいよ」

 小さいところ? 精油の瓶が小さいところ???

「必要ならもっと大きいサイズとかあるよ?」

「サイズ?」

 天音が眉をひそめた。どうやらわかりやすいように説明が必要らしい。

「大容量のものも売ってる。でも、常にフレッシュなものを使って欲しいから、わたしは小さいサイズのものをおすすめするかな」

「なんだって?」
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