アロマティック
「いや、今日はこのまま別々。他のメンバーは今頃違う楽屋で準備してるよ。時間になったらスタッフが呼びにくる手筈になってるから、ステージの歌リハで合流。お、サンキュー」

 みのりからお茶を受け取った永遠が、そのままお茶を口に運ぶ。

「うぁっち……!」

「なにやってるの? 淹れたてだよ? 熱いよ」

 熱さに飛び上がる永遠に驚いたみのりは、もっともな感想を述べる。

「早くいってくれよ」

 眉間にしわを寄せてふて腐れる永遠が可愛くて、みのりは吹き出してしまった。

「だって、熱々のお湯が湯気たててるの見てたでしょ?」

「……はい」

 しぶしぶ認めるその姿が可笑しくて、微笑ましく感じた。しかし、急に黙り込む永遠に、みのりの表情も真顔に戻る。

「大丈夫?」

「………」

 黙ったまま口元を押さえている永遠に、みのりは身を寄せて手を伸ばした。

「口のなか、火傷したの?」

 みのりの手が触れる寸前、口元を押さえていた永遠の手が、まるで触れられるのを避けるように、その手を掴んだ。

「……平気だから」

 みのりは自分の手首を掴む永遠の大きな手を見て、永遠の表情を見上げた。視線を返す永遠の真っ直ぐな瞳と、至近距離でぶつかる。
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