アロマティック
「故意に避けてるわけじゃないことは、わかってやってよ」

「うん、わかった。いつも不機嫌そうだったから気になってたの。聞けて良かった」

「不機嫌そうに見えるのは、人見知りも入ってるからなんだけどな」

 みのりの腿の上で、目を閉じたままの永遠が含み笑い。

「人見知り……」

 あのぶっきらぼうな態度は、不機嫌だったからではなくて、不機嫌そうに見えてただけなんだね。別に嫌われているわけではないのだ。
 収まるところに答えが収まって、気が楽になったみのりの口元もほころぶ。

「面白いよな。皆それぞれこだわり持ってて。本人にとっては大事なことでも、他人からしてみればささいなことだったりな」

 こだわり、か。
 わたしはアロマだ。アロマに関しては妥協したくない。わたしなりにプライドを持って、向き合っている。

「天音はオンゲーのオセロだろ」

「オンゲー? オセロ?」

「天音にいわせると、オセロは一対一でシンプルでいて奥が深い。戦略考えるのが楽しいらしい」

 確かに、時間あるときはスマホばかり弄ってる。何してるのか気になってはいたけど、オセロをやっていたんだね。

「リーダーは、甘いもの」

「あ! そういえば、先日、すあまをごちそうになったよ」

甘くて、もちっとしていて、とても美味しかった。
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