アロマティック
「すあま」

 目を閉じたまま、永遠がフッと笑う。

「さすが、あの人らしいわ」

「リーダーは、甘いもののなかでも和菓子が好きなの?」

「んー、人一倍のこだわりはあるといっておきましょう」

「?」

 永遠のどこか含みのある言い方が、少し引っ掛かったけど、気にすることでもないのかな?
 和菓子男子。なんだか珍しい。
 それぞれのこだわりを聞いていると、改めて個々の個性を再確認出来て面白い。

「聖ちゃんは?」

 興味津々のみのりは、自分のほうから聞いていた。

「聖ちゃんは前髪」

「前髪?」

「決まらないと、いつまでも鏡の前から離れない」

 思い出してみると、楽屋にいるとき、鏡の前にいる時間が長いのは聖だ。

「いわれてみると、鏡を見てること多いかも」

「だろ? そんなときはだいたい、流すべきか、分けるべきか、上げるか、真剣に悩んでる」

「そ、そうなんだ」

 髪の毛はとりあえず、ボサボサじゃなければいいと思っているわたしにはわからないことだけど、聖にとって前髪をどうするかは大事なことなんだね。

「永遠くんは?」

 永遠には、どんなこだわりがあるの?

「俺? 俺はねー、しいていうなら、仕事かな」

「仕事?」

「みのりと一緒だよ。仕事にプライドと誇りを持ってる」
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