百合の花


仕事の都合上夜からなら、と言うので、夜のホテルのレストランにいるわけである。


「コーヒーを一つ。社長さんは?」

「あ…じゃあ私も」


いつのまにか来ていたボーイさんに、コーヒーを注文する。

彼女を気にしているようで、チラチラと見ている。


「……」


やはり、彼女は美しい。

そっと夜景を見る姿も絵になる。


こんな人がわが社のCMに出てくれるなんて、とまだ夢見心地の男。




そう、男は夢見心地だったのだ。




故に見落としていた。


「……」



彼女の不敵な美しい笑みを。
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