沖田総司と運命の駄犬



私は、町の人に、声をかけた。





梓「すみません。」





「何だい?・・・っ。」




私を、見た瞬間、逃げていった。





梓「ちょっと!」





何なのよ!失礼じゃん!






数人に声をかけて、やっと、話を聞いてもらえた。




梓「沖田総司さんって人、知りませんか?探しているんですが・・・」




「沖田総司・・・?あぁ、あいつに、何か用なのか?」




梓「はい。知り合いなんです。」




「ふーん・・・。沖田なら知ってるよ。案内してやろうか?」





梓「良いんですか?ありがとうございます!助かります!」




私は、男の人に付いていった。





タイムスリップなんて言ったら、変に思われるだろうし、黙っておこう。





すると、だんだん人気が無くなる。




こんな所にいるのかな?




でも、占い屋もそうだったし・・・。





「ここだよ。」




そこは、お化け屋敷のような、廃屋っぽい所・・・。





梓「あの・・・。」




「さぁさぁ、入って。沖田が、中で、待ってる。」





私が、入り口に足を進めると・・・。




ドンっ。





梓「キャッ!」





部屋に押し込められた。





梓「あの・・・。沖田先輩は・・・?」




「くくくっ。あんた、本当にバカだな。沖田総司なんて知らんよ?」




梓「なっ!騙したのっ!?」





「信じる方が、悪いんだよ・・・。それにしても、あんた、変わった格好してるなぁ。その着物・・・。売ったら、高く売れる・・・。お前も、味見した後、ちゃんと、売ってやる。」




梓「そんな・・・っ!ヤダ!」




男は、私の腕を掴み、押し倒した。




梓「ちょ!ヤダ!」





男が、私に馬乗りになった。




なんで、私が、こんな目に遭わないといけないの?





梓「うっ・・・。うっ・・・。うっ・・・。」





涙がこぼれる。




男の顔が、だんだんと近付く。




ギュッと、目を瞑ると・・・。



チャキ。



「やめた方が良いですよ?止めないと、その首、斬り落としますよ?」





ゆっくり、目を開けると、男は首筋に、刀を這わされている。




ゆっくりと、男は、私から離れた。




そこに、立っていたのは・・・。





梓「お、沖っ!沖田先輩っ!」




私は、ガバッと、沖田先輩に、抱きついた。




沖田「ちょ!ちょっと!」




梓「怖っ・・・っ。怖かったっ!沖っ!沖田先輩っ!!!うっ・・・。うっ・・・。うっ・・・。」




しばらく、沖田先輩の胸で、泣いていると・・・。




「総司はん?」




女の人の声がしたと思ったら・・・。




ドンっ。





梓「痛っ!」




払いのけられた。






「総司はん?そのお方は?」





沖田「お、お美代ちゃん!何でも無いよっ!この変なのは、関係ないから!」




梓「そんな!守るって言ってくれたじゃないですか!だから、私、ここまで、来たのに!付き合ってるフリまでさせて・・・。うっ・・・。うっ・・・。」




「総司はん、うちのことだけとか、言っておきながら、他にも、おなごがおりましたんやなぁ。酷い・・・。」




そう言って、女の子は、去ろうとする。




沖田「待ってっ!お美代ちゃん!違うんだっ!こんな、おなご、本当に、知らないんだっ!僕には、お美代ちゃんだけ・・・っ。」




「嫌っ!総司はんなんて知らんっ!」




沖田先輩の腕を振りほどき、女の子は、去っていった。






梓「あの・・・。沖田先輩・・・。もしかしなくても、私、悪いことを・・・。」




沖田「うん。したよね?どうしてくれるの?助けてあげたのに、何?この仕打ちみたいなのは?感謝はされても、僕が、迷惑を被る理由なんて、どこにも無いよね?」





梓「ごめんなさい!彼女が、いるなんて、聞いてなかったので・・・。」





沖田「さっきからさぁ、気になっていたんだけど、僕のこと知ってるの?沖田先輩って何?」




梓「知ってるって・・・。あなたが、ここに連れて来たんでしょ!?兄のように慕っている、土方さんって人を、助けたいからって!」




沖田「僕は、君なんか、知らないよっ!しかも、土方さんを兄って!そんな事、誰にも、言ったことないし!って、土方さんを助けるってどういう事?」




一瞬で、冷たい空気になる。





怖い・・・。





私は、一歩ずつ、後ろに下がる。




すると、沖田先輩が、刀に手を置いた。




沖田「僕から、逃げようっての?そこから、動いたら、斬るから。土方さんを助けるって、どういう事か、説明しなよ?というか、君、怪しいから、屯所に連れて行くね?」




梓「何もないなら、私、もう、帰りたい・・・。」





沖田「君、僕の話、聞いてた?君は、今から、屯所行きだから!」





そう言うと、沖田先輩は、私を“屯所”に引きずっていった。

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