沖田総司と運命の駄犬
私って、いらない子・・・。


沖田先輩は、数日で、元気になり、隊務をこなしている。




そんなある日・・・。




梓「あれ?何だか、今日は、誰も居ない・・・。そういえば、沖田先輩もいない・・・。」



私は、夕食後、一人で、屯所をうろついていた。




梓「土方さん、いるかなって、ちょっと気まずいなぁ・・・。」




この前、手の甲にキスされてから、どうも、避けてしまっている。




梓「だって、あんな色っぽい顔見たら、ドキドキするし・・・。」





「何が、ドキドキするんだ?」




いきなり、声をかけられて、私は、飛び跳ねる。




振り返ると、土方さんが、立っていた。





気まずいのに、いきなり、出くわしちゃった。





梓「土方さん、驚かさないでくださいよ。」





土方「別に、驚かせてる訳じゃねぇ。ん?一人か?」




梓「はい。皆、どこかへ行ってしまって・・・。」





土方「そういや、今宵は、島原に行くとか言ってたな。」




梓「島原?」





そういえば、その言葉、皆からちょくちょく聞く言葉だ。






土方さんは、はぁ・・・。と溜め息をつきながら教えてくれた。





土方「島原っていうのは、おなごと夜を明かす所だ。」





梓「おなごと夜を明かす?・・・って、それって・・売春!?じゃあ、今日、皆は、売春を・・・。」





土方「まぁ、そうだな。この時代では、当たり前の事だ。その辺でも、金に困ったら、ござ敷いて、体売ってる奴もいる。」





梓「そんな・・・。って、今日って事は、沖田先輩も・・・?」





土方「あぁ。多分な・・・。」




梓「沖田先輩って、純愛のイメージあったのに、なんか、ショックです・・・。」





土方「相手が、いねぇなら仕方ねぇだろ?」




梓「土方さんも・・・?」





私の顔、今、きっと、ジトッとした変な目で見ちゃってる。





土方「変な目で、見んな。」




そう言うと、土方さんが、私の頭に、手を置いた。




土方「でも・・・。お前が、相手してくれるなら、そんな所には行かねぇけど?」




いつの間にか、頭に置かれた手が、頬に下りてきて、土方さんの指が私の唇をなぞっていた。




梓「っ!」




妖艶に見つめられて、私の胸は、爆発しそうなくらい高鳴っている。





梓「ひ、土方さん、冗談は止めて下さい。」




土方「冗談じゃなけりゃ良いのか?」





ダメだ。この人の色気、凄まじすぎる。





すると、ツーッと、鼻水が垂れてきた。




あれ?鼻水にしては、水っぽい。




土方「オイっ!お前、鼻血、出てるぞ!」




梓「あ・・・。」





土方「ぷっ。お前、こんなので、鼻血、出してたら、この先、どうなるんだよ。くくくっ。」





そう言いながら、紙をくれた。





鼻に、紙を詰める。




紙詰めるの良くなかった気がするけど、どうして良いかわかんないから、これでいっか。




土方「ぷっ。本当に、この姿、年頃のおなごの姿では、ないな。くくくっ。」




梓「そんな事、言わないでください!元はといえば、土方さんが、物凄い色気があるのがいけないんです!」



土方「なんだそりゃ。誉めてんのか?」





梓「まぁ。半分は・・・。」




土方「くくくっ。そうか。俺の色気は、お子ちゃまの梓には、早かったわけだ。」




梓「もぉ、知りません!」




土方「そうだ。貰いモンの菓子があるが、食べるか?」




梓「欲しいです!」




土方「ぷっ。わらしだな!」




また、笑われた。




土方さんは、私の頭にポンと手を置き、優しい顔になった。





土方「今から、来るか?」




梓「はい!」




私は、土方さんの部屋で、お菓子を食べながら、未来の話をしていた。





土方さんは、優しくその話を聞いてくれていた。









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