沖田総司と運命の駄犬



やっと、屯所に戻った。



はぁ・・・。疲れた・・・。




でも、気分は軽い。




早速、梓を見つけた。



何か、ブツブツ言ってる。



梓「普段通りに・・・。普通に・・・。普通に・・・。」



沖田「何が“普通に”なの?」



僕には、全く気付いてなかった梓に声をかけると、梓は、飛び跳ねた。



梓「ギャッ。」




面白い反応だな。




沖田「何?人を、お化けを見たみたいに。」



梓「お帰りなさい。」




沖田「ただいま。山南さんに、迷惑かけなかった?」




梓「かけてないです!愚痴は、聞いてもらってましたけど!」




沖田「どんな愚痴?」




梓「山南さんと私の秘密です。」




沖田「何それ?僕に、秘密とか、生意気!」




僕は、梓の頬をつねった。




梓「痛い!痛い!止めて!」




梓とこうやって、話するの久しぶりだな・・・。



梓とじゃれ合うのは、やっぱり楽しい。



沖田「さ!梓、甘味食べに行こう!」




梓「へ?」




沖田「疲れたし、甘いもの食べたいし。早く行くよ!」




梓「はい!」




僕達は、甘味処へ行った。




団子を食べて、やっと生き返ったって気がする。




梓「よく食べますね・・・。」




沖田「当たり前だよ。もう、甘味処も寄らせてもらえなかったんだから!」




梓「お疲れ様です!」




沖田「でも、梓のマヌケな顔を見てると、帰ってきたなって思う。」




梓「マヌケは余計です!そこは、可愛いでしょ!」




「可愛いよ」って言ったら、どんな反応をするのかな?





まぁ、そんな事、恥ずかし過ぎて言えないけど。




僕は、目の前を横切った犬を指差した。




沖田「はぁ!?可愛い?どこにそんな・・・。あぁ!あの犬か!」




すると、梓は、犬を見て、赤くなった。




梓「違うしっ!しかも、私は、犬じゃないです!」




沖田「はいはい。さ、行こっか。」




僕は、梓の手を取り握った。




繋いだ手から、梓が、緊張しているのが、伝わってくる。




沖田「どうしたの?顔、赤いけど、大丈夫?」




梓「だ、だ、大丈夫です!」





あからさまに動揺してるし。




もっと、僕を、意識したらいいんだ・・・。



沖田「ぷっ。なら、良いけど。まぁ、バカは、何とかって言うし、大丈夫か。」




梓「今、サラッと、失礼なこと言いましたよねっ!?」




沖田「そう?さすがの梓でも、それは、知ってたんだ。」




梓「知ってます!」




二人で、手を繋ぎ、じゃれ合いながら屯所へ戻る。




梓が、手を振り払わないということは、嫌では無いって事だよね?




僕は、隣で、真っ赤になっている梓をそっと覗いて口元を緩めた。
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