沖田総司と運命の駄犬
春・・・なの?これを、春って呼ぶのかっっ!?





部屋の中に入ると、男が一人いた。





コレって、付いて来ちゃヤバいやつなんじゃ・・・。




沖田「忠兵衛さん、この子かなぁ?」




忠兵衛と呼ばれた男が、私の全身を舐めるように見る。




どうしよう!ヤバすぎるよ!





忠兵衛「この女で間違いない・・・と思いますよ?」




沖田「そっか・・・。良かった。やっと、見つけた・・・。」




何が!?見つけたって、私のこと?





軽いパニックに陥っていると、沖田先輩が、振り向いた。




沖田「お願いがあるんだ。」




沖田先輩は、私の手を取り、指に、少し力を入れた。




沖田「こっち来て?」




そう言うと、沖田先輩は、私を、引っ張り、奥の部屋に連れて入った。





梓「ちょっ・・・。」




部屋に、入ると、六畳一間があった。





綺麗に、というか、質素な造りのこの部屋・・・。





梓「ここは?」




沖田「僕の部屋だよ。」




梓「なっ・・・・っ。」



男の人の部屋に入るなんて、初めて・・・っていうか、そんな呑気な事、考えてる場合じゃなかった。





沖田「君ってさぁ・・・。普通に、男の部屋にホイホイ付いて来て入るんだね?」



梓「やっ・・・っ。違っ・・・!ここが、どこだかわからなくて・・・っ。」




その間にも、ずいっと、沖田先輩は、私に近付く。




私が、一歩下がれば、沖田先輩は、一歩、私に近付く。





トンッ。





壁に背中が当たる。





梓「っ・・・。」




ゆっくり、沖田先輩が近付き、沖田先輩の指が、私の頬に触れる。






梓「せ・・・っ。先輩!?」





沖田先輩の顔が近付く。




キスされるっ!




ギュッと、目を瞑ると・・・・。



「ぷっ。」




ゆっくりと目を開けると、お腹を抱えて、笑う沖田先輩がいた。




沖田「くくくっ。プハッ。アハッ。アハハハハッ。何、その顔?その気になっちゃった?」




梓「なっ!」




私の顔が、どんどん、赤くなる。




何、この男・・・。




いつも、優しい笑みを浮かべている、人気者の沖田先輩じゃない。




まるで、別人・・・。




すると、沖田先輩は、私から、離れて、服を脱ぎ始める。




梓「な、な、な、何、してるんですかっっ!!」





私は、とっさに下を向く。




沖田「何って着替え。はぁ!やっぱり、この方が、落ち着く。」





顔を上げると、沖田先輩は、着物を着ていた。





梓「着物?」




沖田「厭らしい子だね?そんなに僕の着替えが、見たかったの?」




クスッと笑いながら、上目遣いで、私を見て、正座をする沖田先輩。





佇まいを正した、沖田先輩が、こちらに向き直る。




沖田「あのね、単刀直入に言うね。僕は、この時代の人間じゃないんだ。」




梓「は?」





何を言ってるの?




また、冗談?




でも、沖田先輩の顔は、真剣で、冗談を言ってる雰囲気はなくて・・・。






沖田「僕は、江戸時代から、君を探しに、時渡りしてきた。」




梓「は?・・・。とっ・・・時渡り?」



ついて行けない。





この人、変だ。




関わっちゃいけない気がする。





私は、とっさに、立ち上がり、鞄を、抱きしめて、出て行こうとした。





沖田「ちょっと、待って!ちゃんと・・・。」



すると、勢いが付きすぎて・・・。




パキッ。





え?





私は、つんのめり、なんとか、転けずに済んだ。




・・・が・・・。



私は、沖田先輩の鞄を、踏んづけていた。





梓「あ・・・。」




沖田先輩が、固まっている。





沖田「・・・。」



梓「・・・。」




沖田「ああぁぁぁぁ!!!!!ぼ、ぼ、僕のプレミアムチョコ!!!!!」




ドンッと押しのけられて、沖田先輩が、鞄の中を確認する。





中のチョコを出した沖田先輩は、プルプルと小刻みに震えている。




梓「あの・・・。沖田先輩?その・・・。ごめんなさい。わざとじゃ・・・。」




沖田「お前ぇぇぇぇ。よくも、僕のプレミアムチョコをぉぉぉ・・・。」




物凄い殺気で、こちらを睨まれた。





梓「ご・・・っ。ごめんなさい!わざとじゃなかったんです!」




沖田「お前、僕が、これを、取るのに、どれっっっだけ苦労と努力したか、わかる?それを・・・。それを・・・。許さない・・・。」




梓「ひっ!」




なんで、チョコだけで、こんなに怒るのよ。この人・・・。




梓「べ、弁償しますっ!弁償しますから!」




沖田「弁償なんて、当然だよ・・・。だったら、早く取りに行くよっ!」





私は、引きずられるように、さっきのゲームセンターに連れて行かれた。



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