沖田総司と運命の駄犬




僕は、部屋に戻った。




すると、梓が、ゴソゴソと何かをしていた。



沖田「また、脱走したかと思った。」




梓「しませんよ。次、やったら、粛清されるって言われたし!」




沖田「いっそ、脱走したら、僕が、斬ってあげるのにね!」




梓と冗談を言って合っているだけでも、少し、心が軽くなる。



梓「そっちの方が、酷いです。あ・・・。沖田先輩、これ。」




梓は、そう言うと、僕に、何かを、差し出した。



沖田「何?これって・・・。」




僕の好きなぷれみあむちょこだ。



梓「はい。プレミアムチョコです。今日は一枚全部、食べて下さい!」




沖田「なんで?いつも、一口しかくれないじゃないか?」



梓「はい・・・。沖田先輩、私、聞きました。お美代さんとのこと・・・。」



沖田「あぁ・・・。」




きっと、土方さんから、聞いたんだろう。




だからか・・・。




梓から受け取ったのは、丸々、一枚だ。






沖田「で?なんで、一枚くれるの?」




梓「失恋を癒してくれるのは、甘いものですっっ!」




僕は、一瞬、止まった。




近藤先生や、土方さんに言われたのは、他に、おなごは星の数ほど、いるからということ・・・。




失恋は、新しい恋で忘れるものだと、誰かも言ってた・・・。




なのに、年頃のおなごなら、絶対、次の恋だと言うと思ったら・・・。




この子は、本当に予想外の事ばかりする。




そう思うと、おかしくなってきた。




沖田「・・・ぷっ。あははっ!普通は、次の恋とかじゃないの?もっと良い娘がいるとか・・・。」



梓「いや・・・。確かに。でも、甘い物は、心を癒やしてくれるはずです!」




沖田「梓らしい。ぷっ。くくくっ。本当に、わらし・・・っ。色恋より、食い気・・・。」




梓「そ、そこまで、言わなくても良いじゃないですか!そんな事、言うなら、返して下さい!“新しい恋”が待ってますよっ!」





そう言うと、梓が、ちょこを、取り上げようと、手を伸ばす。




僕は、それを、避ける。



端から見れば、じゃれているように見えるだろう。




沖田「ちょっと!ヤだよ!ありがたくいただきます!」




僕は、ちょこを一口、食べた。



梓の言ったことは、本当だ。




沖田「梓・・・。ありがとう。」




少し癒された気持ちにさせてくれた梓に礼を言った。




梓「い、いえっ!よ、よ、喜んで貰えてよかったです。」





沖田「何、どもってるの?変なの。」



梓が、真っ赤な顔で、慌てた。




僕は、もっと、甘いものが食べたくなった。





沖田「さぁ!じゃあ、梓に、付き合って貰おうかな?」




梓「え?何に?」




沖田「甘味処!甘いもので、癒されに行こうか!ほら、行くよ!」




梓「は、はいっ!」




僕は、その日、満足するまで、甘味を堪能した。





梓「しばらく、甘いもの・・・いらない・・・。」




沖田「だらしないなぁ。これぐらいで!明日も行くから!」




梓「うげぇ・・・。」






僕は、今日は、この駄犬に、感謝した。
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