恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



こんな佳音を見て、古庄も心が痛む。
佳音にとって自分は、彼女の心を守る最後の砦だったのだろうと想像する。

もちろんこれからだって、教師としてずっと、古庄は彼女を守ってあげるつもりなのだが…。


けれども佳音は、そこに“恋愛”という厄介なものを持ち込んでしまった。
本来ならば、もっと足繁く家庭訪問をして、もっと早くにこうして佳音と話をしなければならなかったと思うが、佳音が抱く“恋愛感情”が古庄の足を鈍らせていた。


一度でも恋愛対象として意識をして、その存在を欲すると、相手が自分の想いに応えてくれない限り、恋する心は満たされない。

それでなくとも、両親からの愛情にも飢えていた佳音は、古庄から“たった一人”として愛されることを渇望した。


今の佳音を、この奈落の底から救い出せるのは、古庄の存在以外には不可能だった。



「……私、あの時、先生からああ言われたけど、先生のことあきらめられない…。あきらめようと思えば思うほど、私の中の先生の存在が大きくなって……」


佳音は小さくなってソファに座り、か細い声で言葉を絞り出す。



「……やっぱり先生が好きなの……」



そう言う佳音を見て、古庄は可哀想だと思うと同時に、頭を抱えていた。



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