恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…賀川さん?大丈夫?」
肩を震わせて泣き続けていた真琴に、声がかけられる。
声の主は、夕食後、平沢と共に入浴監督に行っていた石井だった。
真琴は顔を上げただけで、返事をすることも首を振ることもできない。
「……古庄先生、まだ戻って来ていないんですね?」
石井の背後にいた平沢が、真琴に尋ねる。
真琴はその問いにも答えられなかったけれども、悲嘆の表情は無言の肯定だった。
平沢の目にも、ジワリと涙が浮かぶ。
「大丈夫よ。古庄くんは賢い人だから、きっと自分の身を守る術も知ってるはずよ」
そんな二人に対して、あくまでもポジティブ思考の石井は、そう言って古庄を想う二人を励ました。
真琴だって、自分がここで泣いたり取り乱したりしても、何の役にも立たないことは分かっている。
でも、これほど大きな不安は真琴も経験したこともなく、その不安がこれほどの苦痛を伴うものだとは、これまで知らなかった。
一人の人を愛していればこそ、感じなければならない痛みなのかもしれない。
古庄に出会う前のように、誰も愛することもなくただ一人で生きていれば、こんな思いもしなくて済んだかもしれない。