恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
真琴も嬉しそうに微笑みながら自分のお腹を見下ろし、古庄の手の上に自分の手を重ねる。
新しく産まれてくる命を愛おしみ、幸せそうな二人の様を目の前で見て、佳音は胸がキュウっと絞られた。
特別でもない、日常的でささやかな出来事にでさえ喜びを感じている二人――。
そんな二人を妬み、その幸せを壊そうとしていた自分が本当に悲しくなり、佳音は唇を震わせた。
佳音の視線に気が付いて、真琴が目を上げて顔を赤くした。
古庄に恋をしている女の子の前で、こんな風にイチャつくなんて、まるで嫌がらせみたいだ。
「……和彦さん」
小さな声で古庄に声をかけると、古庄も居間の入口にたたずむ佳音に気が付く。
包む腕をほどくことなく、佳音に微笑みかけた。
「森園も、こっちに来て、触ってみてごらん」
そう言われて、佳音は無言で目を丸くする。もちろん躊躇いはあったけれども、逆らうことなく、真琴の側まで来て膝をつき、恐る恐る手を差し出した。
丸みを帯びた真琴のお腹は思ったよりも硬く、その奥に息づく命の震動が、佳音の手のひらにも伝わってくる。
お腹の中の赤ちゃんは、羊水の中で活発に動き回り、佳音が手を当てたちょうど内側からまた激しく蹴った。