恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



「賀川先生、女子会なんかに来ても大丈夫?『旦那さん』、何も言わなかった?」


藪から棒に、国語教師の谷口から尋ねられる。


「何も言うも何も…、一緒にいるのは週末だけで、今はまだ平日は別々に暮らしてるから…」


幸か不幸か、この日の女子会の話題は、理子の恋バナではなく、真琴の結婚と妊娠のこと。

真琴はまだ真実が話せず、奥歯に何かが引っかかったような物言いしかできない。


「ああ、そういえば、まだ別々に暮らしてるって言ってたっけ…?」


質問をした谷口は、そう言いながら前菜のカルパッチョを美味しそうに頬張った。


「ははあ…。ということは、お互い別々の生活があるけど、想定外で赤ちゃんが出来ちゃって、とりあえず結婚したってことなのかな?」


と邪推するのは、理科教師の中山。

本当はそうではないけれども、学校での説明はそうすることにしているので、真琴は否定はせずに恥ずかしそうに肩をすくめる。


「まあ、順番はどうであれ、最終的には結婚するつもりで付き合ってたんなら、それでいいじゃないの」


石井がそこで真琴を助けるように、口を出してくれる。

実際には、“結婚するつもりで付き合った”期間などもなく、いきなり結婚してしまったのだが…。その真実も告げられず、真琴は苦笑いするしかない。



< 306 / 343 >

この作品をシェア

pagetop