恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



あっという間にそれを平らげて、少し気分が落ち着いた古庄は、森園佳音のことを話し始めた。



「…森園の弟は、まだ小学4年生だった。横断歩道を渡っていた時、信号無視したダンプカーに撥ねられたらしい」


真琴も神妙な顔つきでお茶を一口すすり、うなずいた。


「ご両親の悲痛さは、もう尋常じゃなくて、とても森園のことまで気にかけてあげられる状態じゃなかったから、そのまま放って帰るわけにもいかなくて…遅くなったんだ」


「……子どもを亡くす親の気持ちって、それはとても辛いものなんでしょうね。森園さんも同じご両親の子どもだから、同じように目を向けてほしいとは思いますけど、今はまだショックが大きすぎて無理なんでしょう」


古庄はその哀しみの場に居合わせて、ずっと負のエネルギーを受け続けていたわけだ。
その重圧を推し量って、真琴は自分のことのように胸が痛んだ。


「森園さんには、心のケアとか出来る限りのことをしてあげなければならないけど、今は何よりも、和彦さんの心の疲れを取ってくださいね」


真琴の優しい言葉に、古庄の胸がキュンと震える。





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