恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




古庄には古庄の理想のドラマ設定があるようで、そんな発想を面白く感じて、真琴は涙が残った顔で微笑んだ。


「どんな所で、どんな景色を見ていても、あなたと一緒にいたら他のものなんて何も目に入らないと思います」


それほど、周りの全てがかすんでしまうほどに、古庄は傑出して完璧な存在だ。

真琴は真実を率直に言ったつもりだったのだが、古庄は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに唇を噛み、何も言葉を返せなかった。



「これは、大切にしまっておかないと……」


と、真琴が指から指輪を抜き取り、もとのケースに戻そうとする。

すると古庄は焦って、それを遮った。


「君が普段、指輪をする人じゃないことは知っているけど…それは、いつも身に着けておいてほしい」


「でも…、そうすると、なくしてしまうかもしれません」


「なくしても構わない。とにかく、それは誰の目にも止まるように、ずっと君の左手の薬指に……」


「…誰の目にも…って。皆から、婚約したの?って、訊かれちゃいます」


そこから秘密の結び目が緩んで、結婚していることがバレてしまうのではないかと、真琴は気が気でない。





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