恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
そんな余裕のない古庄の態度に、真琴は戸惑った。
ヤキモチなんて、超然として完璧な存在の古庄には縁のないものだと思っていたから。
「…でも、告白されることなんて、私は滅多にないことですけど、和彦さんにとっては珍しくないことでしょう?最近も、1組の佐野さんと7組の久永さんに告白されたって聞きました」
「えっ…!」
今度は古庄が目を丸くして、真琴を見つめ返す。
「女の子たちの噂くらい、私の耳にも入ってきます」
「…お、俺の場合は、相手は生徒だから。恋愛ごっこの相手をさせられてるみたいなもんだ」
「『ごっこ』だなんて…。高校生でも想いは真剣なんですよ。勇気を振り絞って、告白してるんです」
「……分ってるよ。だから俺だって、ちゃんと真剣に答えてる」
「ちゃんと真剣に?」
「うん。心の底から愛している人がいて、その人以外は好きになれないから、君のことを女性として好きにはなれないし、付き合ったりもできない…ってね」
その「愛している人」というのは自分のことなのだろうが、その言葉を古庄から突きつけられた女の子の心情を察して、真琴は心が陰った。