恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



にべもない受け答えに、古庄は面食らうが、気を取り直して、真琴の背中に語りかけた。


「…でも、何か食べなきゃ、君も体が持たないだろう?食べられそうなものは?果物とかだったらいいのかな?」


優しくされればされるほど、素直になれない自分が嫌になってくる。
涙がどんどん滲みだしてくるが、この涙だけは絶対に、古庄には気づかれたくなかった。



「気分が悪いんです。今は何も食べられないって言ってるでしょう?もう私のことは、放っておいてください!」



真琴は古庄に背を向けたまま、枕に顔を押し付け、強い口調で言い放ってしまった。


さすがに、これには古庄も口を閉ざし、髪を撫でていた手も引っ込めた。


真琴の様子を窺うように、枕元にいる気配がする。
その間、真琴は息を殺して、ずっと顔を上げられなかった。



しばらくして、古庄がため息をついて立ち上がる。
遠く台所の方から、ガサガサと物音が響いてきたので、真琴が買って来て放り出していた物を、冷蔵庫に納めているらしい。


真琴はようやく顔を上げ涙を拭うと、もう何も考えられなくなり、ただぼんやりと薄明かりに浮かぶ壁紙の模様を眺めていた。
そして、あまりの疲労に耐えきれず真琴の意識は途絶え、そのまま眠りへと落ちていった。




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