クリスマスデートから帰ってきたら、幼馴染みが豹変してしまいました。



「いいからいいから、舞ちゃん。行こうぜ」



そういって嫌がるあたしの腕をぐいぐい引っ張って、へらへらとスケベな笑みを浮かべているのは、シンゴ先輩。


現在大学1年生で、あたしがマネをしてるバスケ部で去年までキャプテンを務めていたひとだ。



この人は高校在学中の頃から女の子にモテてて、彼女とっかえひっかえチャラかった。

でもバスケにはほんと一生懸命だったから、シンゴ先輩の引退のときも卒業式のときもちょっとウルっとしちゃったし、『俺のいなくなったバスケ部、頼んだぞ』って笑顔で言われてキュンとした。


先輩はキャプテンのクセによく練習サボったり平気で遅刻したりするユルい人で、『鬼軍曹』って呼ばれてて毎日部員に檄飛ばしまくってビビらせてる今のキャプテンとは対照的な人だった。
けど、後輩には男子にも女子にも分け隔てなくやさしかった。



いい先輩だったと思う。



……でも久しぶりに会ったシンゴ先輩は、髪を染めてアクセなんかじゃらっと付けててなんか安っぽい男になり下がっていた。


おまけにあたしを『倉科』じゃなくて急に馴れ馴れしく『舞ちゃん』呼ばわりしてくるとこなんて、見た目以上に中身がさらにチャラくなってしまった印象だ。



出来たら再会なんてしないで、『いい先輩』として青春の思い出にきれいに封印しておいたままの方がよかった感じ。



でもそのシンゴ先輩は、あたしから失望の目で見られていることにも気付かずに、狙った獲物は逃がさないとばかりにどうにかしてあたしをラブホのフロントに引き込もうとしてくる。

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