ふわふわ。

倉坂さんは不思議な人だ。

不思議な、と言うより変な人だ。

休憩室での一件から、私もしばらくは珍品扱いされてたけれど、その間は全くと言っていいくらい、倉坂さんは“無行動”だった。

いや。
あまり行動的にはなってほしくないけれども。
なんとも落差の激しい人だな。

ある意味、普通な方が不気味に感じるけれど。
普通の行動が不気味に思うって言うのは何だけれど。


だって、何か企んでそうなんだもの。


そう考えて、終わった書類の束を、終了の段ボールに入れる。

ある意味で、企画向きの人なんだろうなぁ。

人には向き不向きはあるけれど、倉坂さんが営業だったら苦労しそうだよね。

でも、珍しいな。
倉坂さんが書類を頼んで来るのって。

いつも、自分で作っちゃってるみたいだし。
まぁ、タイピング早いしね。

私、勝てないしね。

と、倉坂さんから受け取った手書きの書類を見て瞬きした。


男の人の、こんな綺麗な文字は初めて見たよ。

なんだか文字のお手本みたいな文字。

しかも、円グラフの色指定まで……
目に優しい配色でしてある。

微妙にフォント指定と、大きさも指定……と。


「………ふっ」

一人で仕事してるんじゃないわ。

事務職なめんじゃないわよ?


不適に笑う私を同僚たちが訝しげに見ているのに気づかず、倉坂さんの指示を頭に叩き込んで行く。

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