カルネージ!【完】
私たちの他に、家族連れと、老夫婦、中年の1人客しかいなかった。
家族連れはちょうど私たちと入れ違いでお店を出るのか、ジャンバーを着せようとする母親から小さい男の子が楽しそうに逃げ回っている。
「こら! お店では静かにしろっていっつも言ってるよね? 悪い子にはサンタさんこないんだからね⁉︎」
「やだっ!」
お母さんの言葉に、それまでうるさかった子どもが涙目になって大人しくなる様子が懐かしくって、微笑ましい。
いい家族だなあ。可愛い。私も信じてた、サンタさん。そういう時期があったわー。
しみじみと思っていれば、私の横の捻くれ者は、そんな温かい光景にも通常運転でわずらわしそうに目を細めた。
「……阿久津?」
「ちょっと辻野、あの子供にサンタさんの正体は目の前の父親なんだぜ、笑えるだろって言って教えてあげろよ」
「最低か」
この男は……!
「お待たせしましたー、醤油ラーメンお二つです、ごゆっくりどうぞー」
いつの間にかやる気のなさそうな女性店員が湯気の立つどんぶりをそれぞれの前に置いて立ち去る。
阿久津が割り箸を渡してくれたので、それを割って麺をすくった。