そっと、もっと、ぎゅっと~私に限り無い愛を~
「…そう言えば、今日、部長は遅いですね」

私の言葉に答えたのは杉下さん。

「部長、昨日から急な出張で、京都に行ってるよ」
「そうなんですか」

「…ぉはよう」

私から10分ほど遅れて、修がオフィスに入ってきた。
未だに私たちの関係は、企画部の人たちは知らない。

(部長以外は)

「おいおい、朝だって言うのに、疲れてんな」
澤田さんが修の肩を叩く。


「あ~・・・朝までほとんど寝てないから」
「///!!」

そう言ってチラッと私を見た修は少しだけ口角をあげた。
酔っていたとはいえ、朝方まで抱き合っていたらしく・・・

私は覚えていなくても、修は完全に覚えているわけで。

皆から顔を見られまいと、急いでデスクに座ると、仕事を始めた。

「ふ~ん・・・ぁ、そうだ、矢沢」
「ふぇ?!・・・は、はい?」

突然声をかけられ、声が裏返る。
そんな私を見た修はフッと笑う。

澤田さんと、杉下さんは理解できないと言った顔で、私を見た。


「今日、営業の奴らと、一緒に外回りするから、付いて来いよ」
「営業の人、ですか?」

「ん」

「分かりました、お供します」

私の言葉に、満足そうな顔をした澤田さんは、自分のデスクに座った。
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