きっと、君を離さない



「・・・少し、話辛い話なんですが・・・」

「はい。教えてください」




春香の事なら、なんでも聞きたい。





「・・・リストカットの傷ですが、今回の者だけではなく、古い傷跡がいくつかありました」

「え・・・」

「とても小さく、よく見ないとわからない傷跡にはなっていますが」




気づかなかった。
春香と出会ったのは秋になって長袖になってからだったし。
春香が隠すような素振りをしたこともなかったし。





「それと・・・」




医師がとても言い辛そうに続ける。





「春香さんの身体に、・・・おそらく、虐待ではないかと思われる傷跡がありまして」

「虐待・・・?」

「主に背中など見えない場所ですが・・・。煙草を押し付けられた跡も・・・」





頭の中がグルグルと廻る。
くらくらして、意識が遠のいていきそうになる。





< 227 / 390 >

この作品をシェア

pagetop