最後の恋の始め方
 「そうなんですか……」


 山室さんの発言から、また佑典と連絡を取り合ったことが推察された。


 佑典との交流が伝えられる度に、山室さんにどんな話をしたのだろうって不安になる。


 逆に山室さんも、佑典に何を喋ったのかって。


 でも根掘り葉掘り訊くことはできない。


 私は一人、不安を重ねるのみ。


 「××は佑典と現地の酒を酌み交わして。また次の国に旅立って行ったらしい」


 「佑典も久しぶりに学生時代の友人に会うことができて、懐かしかったんじゃないのでしょうか」


 「だよね。俺だったら大学も地元だし、友人には時間さえ整えばすぐにでも会える。でも佑典の場合はそうはいかないからね」


 「ですよね……」


 「俺も二年目以降は、ゆっくり有給を取らせていただこうって思ってる。佑典に会いにいこうかな」


 「それはいい考えですね」


 私は他人事のようにつぶやいた。


 なるべく早く、佑典の話題は終わらせたかった。


 なのに……。


 「そうだ、理恵ちゃんも一緒に行こうか!」
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