最後の恋の始め方
 「割り切る?」


 「そう。修復不可能なものとして封印して、別の道を歩むっていうのも選択肢」


 「え……」


 私は戸惑いのあまり、さほど欲していないにもかかわらず、ミネラルウォーターに手を伸ばした。


 しかし焦っているからか手を滑らし、グラスを倒してしまった。


 「あっ」


 慌ててテーブルの端に置かれている、紙ナプキンを取ろうと手を伸ばす。


 すると山室さんも同じことを考えていたようで、手と手が触れてしまった。


 「すみません」


 私は手を引っ込めた。


 「いいよ、俺に任せて。もう氷だけだね」


 グラスにはもうほとんど水は残っておらず、氷が数個グラスからこぼれ落ちた。


 山室さんはそれをつまみ、空いているお皿に除けてくれた。


 「ほんとすみません」


 「いいんだ。理恵ちゃんに世話を焼くのは、大学時代から俺の趣味と化していたから」


 「趣味だなんて」


 「趣味というか、ほとんどライフワークになってるかもね」


 「私、そんなに頼りないですか」


 つい笑ってしまった。


 その時一瞬目が合ってしまう。
< 134 / 162 >

この作品をシェア

pagetop