最後の恋の始め方
 「理恵ちゃん」


 「はっ、はい」


 急に真剣な声と表情で名前を呼ばれたので、私は背筋が伸びてしまった。


 「これから俺が言うこと、真面目に聞いてほしい」


 茶化すことなどできない雰囲気。


 私は何も言えずに、山室さんを見つめ返すのみ。


 嫌な予感が頭をよぎる。


 「伝えるべきかどうか、しばらく迷ったんだけど」


 「どのようなことでしょうか」


 そう答えて後悔した。


 訊かないほうがよかったかもしれないと。


 「このまま佑典との仲が、以前に戻ることの叶わぬまま、途絶えてしまうのならば」


 「……」


 「その時は俺との将来を、考えてみてはくれないかな」


 「え……」


 「俺と……付き合ってほしい」


 「山室さん……」


 心臓の鼓動が、自分に聞こえるどころか。


 山室さんにまで届いてしまうのではないかと思ったほどだった。


 絶対あってはならないと願っていた、起こってはならないことが現実のものとなってしまった。


 「俺じゃだめかな」


 「……」


 「佑典の変わりにはなれないけど、理恵ちゃんのそばで見守っていたいと思う」
< 135 / 162 >

この作品をシェア

pagetop