最後の恋の始め方
 「冗談がキツいね」


 山室さんは苦笑する。


 私が苦し紛れにでまかせを口走っていると判断したようだ。


 「佑典を庇うために濡れ衣をかぶってるの? それとも俺を遠ざけるため?」


 「濡れ衣なんかじゃ……」


 「冗談にも程があるよ。理恵ちゃんが佑典を裏切って二股? 別の男と?」


 私の口にした言葉を復唱する。


 「山室さんはご存知じゃなかったですか。オーケストラ部のほうで一時、私が援助交際をしてるって噂が広まったことを」


 「ああ。そんなこともあったね。佑典も笑って否定していたし、そんな根も葉もない噂、」


 「噂じゃ……ありません」


 「え?」


 「……」


 「まさか理恵ちゃん、援助交際を……」


 「いえ、援助交際ではありません。私が相手の男の人と一緒にいるところを、誰かに見られたのがきっかけで。援助交際と誤解されたみたいなんです」


 「まさか」


 「私は佑典を裏切り続け……。ついに佑典が卒業式を終え、謝恩会から帰って来た時、全てを知られたのです」


 「謝恩会の帰りって、佑典があの後輩の子を家に連れ込もうとしたんじゃなかったっけ」


 「私たちは同時に、別な意味での裏切りをしてしまっていたことを、それぞれ目の当たりにしてしまったのです」
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