最後の恋の始め方
 「……」


 「俺は絶対に、理恵ちゃんを救ってみせる」


 「心配には及ばない。僕が責任を持って、彼女を幸せにしてみせるから」


 僕は山室をシャットアウトしようとするものの、山室はそう簡単には引き下がらない。


 意地になっているようだ。


 悪(僕のこと?)に囚われた姫君である理恵を救うのが、正義の味方としての自分に定められた宿命と思い込んでしまったらしい。


 「理恵ちゃん」


 山室が理恵に一歩近づいた。


 「今日はここまでにしておく」


 今日のところは形勢不利と、一時撤退の意志を固めたらしいが、


 「君が正しい道を進む決心がつくまで、ずっと待ってるよ。電話でもメールでも、いつでも連絡してきて」


 和仁そばにいるにもかかわらず、山室は戦闘継続宣言をしたも同然だ。


 そして、


 「あなたの写真家としての実績は素晴らしいと思います。だけど一人の男としては、到底受け入れることはできません。理恵ちゃんが不幸になるのは目に見えています」


 ついに最終通告をしてきた。


 「いずれあなたから理恵ちゃんを、引き離してしまいたい」
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