最後の恋の始め方
 「佑典のお父さんって、どんな会社経営してるの? 自営業としか聞いてないんだよね」


 当然山室さんは疑問を持つ。


 「あ……。業務内容は写真関連で」


 今後佑典が打ち明けるなどの理由で、山室さんが真相を知る可能性もあるので、嘘は避けて曖昧な回答をしておいた。


 「写真? 現像とかしてるの? それとも入学式とかの撮影をする、街の写真屋さん?」


 「はい。それらのようなものです」


 「そっか。いいこと聞いちゃった。今度そっち方面に行く用事があったら、寄らせてもらうから」


 「えっ。そんな」


 もし本当に現れて、和仁さんに遭遇したら。


 いろいろとまずいことが発生しそうなので、何とか阻止しようとした。


 「距離なんて気にしなくていいって。俺は石狩(いしかり)館内の北部方面が担当だから、そっち方面もかなり行くんだよね」


 「でも……」


 「それに、さっき言ってたよね。俺の勤務する本店が職場のメインバンクだって。春先に本店までわざわざ、残高証明書をもらいにいくのが大変だったって」
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