最後の恋の始め方
 「もしもし、今提出終えました」


 愛しい声が聞こえてくる。


 「僕も無事に打ち合わせ終了。そっちも?」


 「はい。肩の荷が下りました」


 僕はたまたま、この日は朝から札幌市内中心部で打ち合わせ。


 昼には終わる予定だったので札幌駅で理恵と待ち合わせして、それから車で移動し、郊外のレストランで食事する約束だった。


 理恵の卒業論文提出祝いを兼ねて。


 余裕を持って正午に行くとのことで、待ち合わせは札幌駅にて。


 ……時間的には余裕があるにもかかわらず、無意識に急いでしまう。


 早く会いたかった。


 ここしばらく、卒業論文提出期限が迫っていたため、理恵は大学の授業以外は自宅にこもって仕上げに追い込みをかけていた。


 会いたい気持ちはあったけれど、今は卒業に向けて論文の完成が優先。


 僕もまた忙しい時期に差しかかっていたこともあり、論文完成までは会うのを控えていた。
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