最後の恋の始め方
 「だ、だめです」


 私は先に電話を握り締めた。


 なおも電話を奪い取ろうとする和仁さん。


 「そんなに僕から隠したい?」


 挑発的な眼差しで、私を見据える。


 「いえ、そういうわけでは」


 「だったら今ここで出られるよね」


 「え……」


 電話を片手に、私は硬直していた。


 「出て、あいつに伝えたら? 今私は佑典の父親の腕の中、こんなに感じてるって」


 再度引き寄せられ、腹筋を舌でなぞられ、そのまま胸をもてあそばれ……。


 「やめて……ください!」


 太腿の内側をその手で触れられた時、耐え切れないくらいに体が震えて、思わず和仁さんから体を離してしまった。


 その際携帯電話を手放し、電話は床に音を立てて落ちた。


 気づいたら着信音は止まっていた。


 山室さんはあきらめたか、メールに切り替えるつもりか……。


 「……」


 寝室は再び、沈黙に包まれた。


 空しさだけが湧き上がる。


 信用されていないのだろうか。


 ちょっと目を離すと職場に男を連れ込むような、ふしだらな女だと思われているのだろうか。


 なんか悔しい……。
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