最後の恋の始め方
***


 夜の冷たい空気が互いの肌に触れる。


 枕元のスタンドの薄明りでさえ、妖しく感じられる。


 僕の腕の中の理恵は、暗闇の中……ますます愛しくてたまらない。


 「あの男と……。こんなことしてみたいって思う?」


 「馬鹿言わないでください」


 指で理恵の一番感じるところに触れながら、少し意地悪をしてみた。


 「やってみたら、病みつきになるかもしれないよ」


 理恵の首筋にキスをしながら、思わず苦笑してしまう。


 いい年して嫉妬に狂ってこんなことをしている自分を、客観的に見ればやはり恥ずかしい。


 「そんなことしたら報復として、過去にないくらいに私をいたぶるくせに」


 「かもね」


 一糸まとわぬ姿の理恵を、背中からもてあそぶように肌を撫でる。


 「あいつと二人きりで会ってる時……。抱かれてみたいって感じることはないの?」


 試すように理恵を覗き込む。


 僕のいない時に、たまに二人きりであの男と会っているのは知っている。


 理恵は僕に何も言わないけれど、隠しても無駄なことだ。


 「そんな目で見たこと、一度もありません」


 「理恵は何とも思ってなくても、向こうはどうだか分からないよ。男はみんな・・・獣」


 そう言い放ち、背中から腕を伸ばし理恵の胸を掴む。
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