最後の恋の始め方
 「や……」


 思わず理恵の綺麗な唇から声が漏れる。


 粘土をこねるようにその胸をいじると、理恵の体全体から力が抜けていく。


 数え切れないほど愛し合い、どうすれば愛しい女を蕩けさせることができるか知り尽くしている。


 「だめ……」


 力を失い、ベッドに崩れそうになった理恵を抱きとめた。


 「もう少し。どれくらい感じているか、教えて」


 手を理恵の素肌の上を滑り抜け、反応を確かめながら、少しずつ下へと・・・。


 「!」


 指で触れてみると、自分だけがこんなにみだらに感じていると思い知らされ、恥ずかしくなるようだ。


 僕の手を押し退けようとするけれど、本当に嫌がっているわけではないので、いずれは静かに受け入れる。


 「少し触れただけで、ここまで反応されると。どんな男に触れられてもこうなるのかなって心配になる」


 理恵の快感の高まりを指で感じながら、耳元で囁くようつぶやいた。


 「そんなことしません・・・」


 「それならば。どれだけ僕が欲しいか、体で示してみて」


 「え・・・」


 「理恵の手で、僕を理恵の中に導いて」


 「和仁さん」


 もう、触れ合うだけじゃ我慢できないのは分かっている。


 理恵は自らの手で、一つになることを望んだ。


 出会った頃から常に受身だった女が、次第に積極的に男を求めるようになっていく様は嬉しい反面、不安にもなる。


 いずれ他の男をこのように求めるようになるのではないかと、あらぬことを考えてしまう。


 「もっと……」


 今はまだ、僕以外の男ではこれほどまでに乱れない。


 永遠に僕だけの理恵であるように、心も体も洗脳し尽くしてしまいたいと願った。
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