最後の恋の始め方
***


 「昨日、水無月氏のオフィスに出向いたんだけど」


 レモンティーを飲みながら、山室さんが告げた。


 昨夜山室さんからのメールで、和仁さんに会ってきたことは知っていた。


 それに関して今、話題になっている。


 この日は山室さんとお茶をすることになった。


 午後しか時間が取れないとのことで、市内有名ホテル一階の喫茶コーナーにてケーキとお茶。


 「昨日は理恵ちゃん、出勤してなかったんだね」


 「はい。昨日は先生も午後から外出とのことでしたし、さほど仕事もなかったので、出社しなくていいと」


 人件費節減のためか、あまり仕事のない日は来なくてもいいと言われている。


 昨日に関しては、山室さんが現れる予定だったので、意図的に私を遠ざけた可能性もあったけれど……。


 「満期になる保険を、利率のよいものに再契約したり、成り行きで作成した複数の通帳を一つにまとめたり、あれこれお願いされちゃった」


 著名な写真家とのコネクションができて、山室さんは喜んでいる様子。


 「まさか大学時代の親友の父親が、あんな有名な方だったとは。こんな偶然、めったにないよね」
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