最後の恋の始め方
 「私も……」


 初体験の相手が、彼氏の父親だったなんて。


 そんな偶然めったにないのは、私も同じ……。


 「この前、佑典からメール来たんだ」


 「え……」


 私にはあれから、連絡がない。


 私からするべきなのか、向こうから何か言ってくるのを待つべきなのか、迷っている間に時は流れ。


 連絡の絶たれたまま、間もなく一年が過ぎようとしている。


 山室さんとはまめに連絡取り合っている様子で。


 それを聞くたびに不安になるというか、焦燥感に苛まれる。


 「佑典は、元気そうでした?」


 「うん。雪もない冬は初めての経験で、違和感ありまくりだけど、それはそれで趣もある……みたいなこと書いていたね」


 「そうですか……」


 佑典と共に歩いた雪道、イルミネーション、冬の情景が懐かしく感じられる。


 「佑典のいない冬だなんて、久しぶりの経験ですから」


 自分で撒いた種なのに、どこか苦しい。


 「俺も。彼女と別れて初めての冬だから。あいつなしで生きていた頃が思い出せなかったりする」
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