波音の回廊
 辺りは静かで、聞こえてくるのは波音のみ。


 満月の光は眩しいくらいに、海を照らしている。


 かすかに響き渡る波音。


 波音に包まれた回廊が、沖合へと私を導いているかのよう。


 私は少し歩き始めた。


 幻の島の手がかりを求めながら。


 波打ち際に沿って。


 ……。


 しばらく歩き続けた時だった。


 パーン!!


 いきなり破裂音みたいなものが、耳に響いてきた。


 気がつくと砂浜の奥のほうで、若者グループが打ち上げ花火に興じていた。


 「お姉さん、一人~? 夜の一人歩きは危ないよー」


 私の存在に気づいた、二十歳くらいの若者が私に話しかけてきた。


 「せっかくだから、俺たちと花火していかない?」


 私は聞こえないふりをして、歩き続けた。


 「一人歩きは危険だよー。海に引きずりこまれて海底の島に拉致られるよー」


 誰かがそう言った後、連中は大声で笑い始めた。
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