波音の回廊
 (思い出した。私は七重の部屋で七重を恫喝し、刀に手を伸ばすような振る舞いにまで及んだのだった)


 では七重が、夫である当主にそれを告げ口して、当主は清廉を非難しているのか。


 私も清廉も、その程度の認識だった。


 「押し入ったのは事実だ。だがそれは、七重の言動を諌めるためであって、」


 「……七重さまは、若様とは違ったことを申しています」


 「え?」


 「……夜分に若様が七重さまの部屋に押し入り、その……襲われそうになったと」


 「は? 襲われそうに?」


 「……手ごめにされかけたと、七重さまは殿に申しているのです!」


 「何だって!?」


 清廉の表情が、見る見る蒼白になっていった。
< 132 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop