波音の回廊
 「あまりの仕打ちです。暴力を振るえば何とでもなるとお思いなのでしょうか」


 地面に座り込んだまま、七重は大袈裟に泣き出した。


 「くだらない演技はやめろ!」


 「清廉!」


 当主が清廉を制止した。


 「七重。お前は館に戻っていなさい」


 「すみません、殿……」


 七重は涙を拭きながら、慌てて駆けつけた侍女たちに支えられて館へと戻っていった。


 きっと内心、舌を出しているのだろう。


 「父上、あんな女の言うことなど、全て嘘でございます。私は……」


 「落ち着け、清廉」


 当主は息子をなだめる。


 「お前がしでかしたことは、消しがたい過ちだ。だが若さゆえの暴走として、一度くらいは目をつぶっても」


 「父上……?」


 清廉は愕然とした。


 父は七重の讒言を信じているのか……? と。
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