波音の回廊
 私は波打ち際に立っている。


 浜を逃げようとすると、この男に捕まる可能性が高い。


 「……!」


 思わず私は、海の上に輝く道を、あの島へと向かって逃げようという気になった。


 「危ないぞ!」


 男が私の肩を掴む。


 「離して!」


 私は男の手を振りほどき、光る道を海へと向かって走り出した。


 その瞬間。


 波がうねりを上げて、私を飲み込んだような気がした。


 私は海に落ちた。


 少しは泳げるはずなのに、体が言うことを聞かず、海底へと引きずりこまれていく……。
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