波音の回廊
 「知ってる? 京の室町幕府はもはや、権力が失墜してしまっていることを」


 「え?」


 「公方様(将軍)が若輩なのをいいことに、管領や守護大名が政治に介入をし続け、挙句の果てには正室やその実家の操り人形と化しているのよ、公方様は」


 「操り人形……」


 「身動きが取れない状況の中で、公方様は次第に政治への関心を失い、今ではやけになって贅沢三昧の日々なのよ」


 「公方様もある意味、気の毒ではあるな」


 「そんな状態だから、もうすでに幕府は満足に機能していないの。だから側近たちが好き勝手に実権を握り、地方の守護大名はこの隙に自立の道を歩みだし……」


 「……」


 「間もなく幕府内の争いは全国規模のものに発展し、収拾がつかなくなっていくはず」


 「日本……全国に?」


 「世は戦国時代に突入よ。強い者が勝ち、弱い者は滅びる」
< 169 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop