波音の回廊
Destiny
 「ありがとう……ございました」


 清明の部屋を出て、しばらくの間無言で庭に面した廊下を歩き続けたのだけど。


 かなり離れたところでようやく気持ちも落ち着いてきたので、清廉に礼を述べた。


 「いや、私のほうこそすまなかった。お前が私の部屋から飛び出して行った時、激突して薬をこぼしたのを拾い集めるのは後回しにして、まずお前を追いかけるべきだった」


 そういえば。


 意識を取り戻した時に、横たわっていた部屋を飛び出した際。


 廊下で髪の長い男性に激突したのだけど。


 今思えばあれは、清廉だったんだ。


 私に薬を運んできたところだったらしい。


 「それから追いかけたのだけど、見失ってしまって……。馬小屋の前で清明の子分たちが、狩場で女を拾っただとかいう武勇伝を口走っていたから、ようやく居場所が分かったんだ」


 「……」


 「私が駆けつけるのが一歩遅かったら、大変なことになるところだった。怖い思いをさせてすまなかった」


 清廉は深く謝罪する。
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