Sweet Lover
……うっ。

なんとなく気まずくて、こういうとき、なんていったらいいのか分からない。

目を泳がせる私の頭を、響哉さんがくしゃりと撫でた。

「俳優は嫌い?」

「ううん」

……好き、といいかけて慌てて唇を閉じる。

私が何を飲み込んだのか、きっと分かったに違いない。くすりと響哉さんが笑う。

「マーサちゃんは、手ごわいねぇ」

「……罠?」

「人聞きが悪い」

響哉さんは私の耳に形の良い唇を寄せた。

「駆け引きの無い恋なんて、つまらないと思わない?」


……アナタみたいなオジサン、私の恋愛対象じゃありませんっ……なんて嘘は、言えなくて。私は頬を染めて、唇を閉じる。
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