Sweet Lover
地下駐車場に、響哉さんの黒いベンツが止まっていた。

その、窓ガラスのところに置かれている封筒を黙って手に取ると、助手席を開けてくれる。

「どうぞ」

「……その手紙、なぁに?」

響哉さんは興味なさそうにくしゃりと握りつぶした封筒に、目をやって薄く笑った。

「さぁ。
 ファンレターか、駐禁のお知らせか。
 後で目を通しておくから、心配しないで」

くしゃりと私の頭を撫でてから、丁寧に車のドアを閉める。

響哉さんは、車を走らせながら夕食に何が食べたいの、なんて聞いてくるから。

そういう何気ない会話を交わしているうちに、私の頭の中からすっかり封筒のことを忘れ去られてしまった。
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