Sweet Lover
「……響哉さん?」

戸惑う私に見せてくれるのは、変わらない優しい笑顔。

「ほら、普通に歩かないと人目につくよ。もっとも、俺はそれでも大歓迎だけどね」

響哉さんが私の肩に自然に手をまわす。

そうして、ノックも躊躇いもなしに理事室のドアを開けた。

「……ちょっと、何?」

私はびっくりして息を呑む。
生徒だってこんなところ容易に入れないのに。

響哉さん、間違いなく部外者よね?

「ん? ここに秘密の階段があるの。で、地下駐車場に繋がってるんだー。
 便利だよね」

「どうして、こんなこと知ってるの?」

隠し扉を開き、降りていく響哉さんのことが不思議で仕方がなくて、私は声をかける。

響哉さんは、振り向くと私の手を掴む。
困った表情を隠すように、口角を引っ張りあげて、笑みを浮かべていた。

どことなく、心もとないアンバランスさを感じさせる表情に、私の心がざわついた。

「じいさんが居ないとはいえ、ほかの誰かに出くわすと面倒だから。
 ほら、おいで」

誘われるがまま、引っ張られるままに任せて、私は狭い螺旋階段を下りていく。
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