Sweet Lover
そうして、誰かの手が、頭の後ろにかかる。

本当に怖いときには悲鳴も出ないんだと、初めて知った。


「Te voy a matar.」

耳に欺くように囁かれた言葉は、日本語でもなければ、英語でもなかった。

それでも。
ゾクリとするような、悪意を感じて身震いする。

わざと声音を変えているとしか思えないような、低く掠れた声。

彼の日本語がどこか不自然に聞こえるのは、母国語が日本語じゃないから……?


途端、私の脳裏に一人の男の姿が浮かんだ。

――まさか――


恐怖に怯える私から、ゆっくりと、目隠しが外されていく。
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