Sweet Lover
「いいね、その、絶望的な顔」

言いながら、彼がポケットから取り出したのは、サバイバルナイフ。

ぎらついた刃を私に見せつけて、震える私をあざ笑っている。

「どうせ、後は死ぬだけだ。
 折角だから、思い出してから死ねよ」

「……何を?」

そう言ったつもりだったけれど、震えた声は言葉になっていたかどうかさえ、怪しい。

男は大きく一つ、ため息をついた。
あまり、日本語が得意ではないのだろう。言葉の運びはゆるやかだし、イントネーションも独特。一言喋るたびに、唇を閉じる。

不気味な沈黙に、身が竦む思いでいっぱいになった。


――けれども、それは私にとってラッキーかもしれない。

私はそう自分に言い聞かせることにした。

時間が延びればその分、発見される確率も高くなるわ、きっと。
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